過激な動物保護と”ヒューマンジー”:漫画『ダーウィン事変』1巻レビュー

人間とチンパンジーのハイブリッド「ヒューマンジー」として生まれ、成長した少年・チャーリー。その存在は、人間社会にどのような影響を及ぼしていくのか…?

うめざわしゅんさんの漫画『ダーウィン事変』1巻コミックス・レビュー。ややネタバレあり注意。

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『ダーウィン事変』1巻 主なあらすじ

ダーウィン事変(1) (アフタヌーンコミックス)
  • カリフォルニアの生物化学研究所を、武装したALA(動物解放同盟)が襲撃。実験動物たちを逃していく。そこで彼らは流産しかけているメスのチンパンジーを発見。動物病院へと運ぶ。
  • 2ヶ月後、そのチンパンジーが出産。生まれた子供は人間とチンパンジーの交雑種(ハイブリッド)「ヒューマンジー」であることが判明する。
  • さらに15年後のミズーリ州。「チャーリー」と名付けられたヒューマンジーの少年は、人間の養父母のもとで成長。「初めて」ハイスクールへ通う日を迎える。
  • かつて世間に騒がれ、また人間とは異なる見た目を持つチャーリー。他の生徒とのスムーズな交流は難しく、中には絡んでくる者も。だが猫を助けたことをきっかけに、陰キャ少女・ルーシーと友人関係となる。
  • 一方ニューヨークで、多数の死傷者を出す過激な爆弾テロが発生。それは「動物の平等な権利」を主張するALAによるものだった。
  • そのリーダー・マックスは、ヒューマンジーであるチャーリーをその「戦争」に引っ張り出すことを画策し、活動を開始。その手はルーシーやチャーリーの家族にも及び…?

人間とチンパンジーのハイブリッド少年

もし人間とチンパンジーのハイブリッドが生まれたら、こんなストーリーが展開されるのかもしれない…。そんなリアルさを持って描かれるのが、漫画『ダーウィン事変』。

人間の言葉をしゃべるが人間ではない、かといってチンパンジーでもない、「ヒューマンジー」であるチャーリー。果たして彼は人間の味方なのか?それとも?

…という発想自体がバカバカしい!と感じさせる描き方が、本作の面白さ。

チャーリーはあくまでも”ヒューマンジー”という一つの種であり、それ以上でも以下でも無い。しかし彼に「人間」を求める周囲との齟齬・軋轢が、翻って読み手の価値観を破壊していく。その感覚が非常に新鮮!読んでいてハッとさせられる。

「ヒューマンジー」が巻き起こす騒動

そのチャーリーは「人間とチンパンジーのハイブリッド」だが、能力が半々というわけではない。実際は頭脳も肉体も人間を大きく上回っている、という脅威の生物。

その能力が故に成長期には「問題」を起こし、現在も警察にマークされている。また活動のシンボルとして過激な動物愛護組織ALAに狙われる身。組織はチャーリーの周辺への危害も辞さず、それが騒動を巻き起こしていくことに。

チャーリー自身は自分を「人間でも無いチンパンジーでも無い一つの『個』」として定義づけている。が、そんな「自身の在り方」に関わらず、彼を良くも悪くも「特別なもの」として見る人間たち。

彼を心から愛する養父母や、ハイスクールで友人となったルーシーなど、好意的な人々ももちろん居る。が、彼に「何かを期待する」人間たちは、時に過激な手段で関わろうとしてくるのだが、その時チャーリーはどのように行動していくのか?『ダーウィン事変』2巻へ続く!

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