不死の少女と、死に場所を求めていたサムライ。二人は一蓮托生の身となり、過酷な運命にその身を投じていく…!
相田裕さんの漫画『勇気あるものより散れ』1巻コミックス・レビュー。ややネタバレあり注意。
『勇気あるものより散れ』1巻 主なあらすじ
- 明治7年(1874年)の東京府。「時代が変わる前に死にそこねたわ」と自嘲気味に語る、元・会津藩士の鬼生田春安。刀剣屋に出入りする袴姿の少女を見て、時の節目を感じる。
- その春安は、旗本の娘・菖蒲の復讐に加勢。夜半、馬車で移動する内務卿・大久保利通を襲撃する。その中から反撃してきたのは、刀剣屋で会った少女・九皐シノだった。
- 戦いの末、春安はシノに致命傷を与える。しかし再び立ち上がった彼女は、髪の色を銀に変化させ驚異的な力を発揮。逆に春安に刀を突き立てる。
- 死に場所を探していた春安。死を受け入れようとするが、その口に自らの血を与えるシノ。彼女は不死者「化野の民」と人の間に生まれた「半隠る化野民(はたかくるあだしののたみ)」の一人。
- その血を飲んだ春安はシノの眷属となり、「母を殺して自分も死ぬ」という彼女の目的のために生きることとなる…。
侍は不死の少女の眷属に
『GUNSLINGER GIRL』『1518! イチゴーイチハチ!』などの人気漫画を生み出した相田裕さんの新作『勇気あるものより散れ』。
時代の狭間で死に損ねた士(さむらい)と、悲しい目的を持つ不死の少女。二人が主従関係となり、幕末の世をともに歩んでいく様が描かれる。
函館における新政府軍との戦いで散る覚悟をしていたが、意思に反して生きながらえた春安。しかし彼が出会ったのは不死の少女であり、その眷属となったことで半不死に。
一方のシノ。彼女には「化野の民」として、為政者に不死者を作る道具として利用され続け、そして気が触れてしまった母を開放、そして自らも命を絶つ、という悲しい目的が…。
修羅の道を歩んでいく二人
その彼女に「生かされた」春安は、シノに仕え、その目的の成就を手助けすることこそが、自分の命の使い道だと悟り、ともに修羅の道を歩んでいく…。
この悲壮にして過酷、だが燃え上がるようなシチュエーションが、『勇気あるものより散れ』の根底にある面白み。
また物語には上記のようにややファンタジー風味の味付けもされているが、歴史や実在した人物を絡ませてそこはかとなりリアリティを演出。綿密な取材・研究から生み出される日本刀アクションも、迫力満点。
さて、かくして一蓮托生の身となった二人。不死殺しの妖刀「殺生石」を求めるのであるが、そこにはシノと同じく「半隠る化野民」である兄弟、そして春安とも縁のある意外な人物が立ちふさがり…?『勇気あるものより散れ』2巻に続く!
コメント