社会の”進化”と”闇”を描くサスペンス:漫画『ダーウィンクラブ』1巻レビュー

格差社会の是正を訴える「警告」は、3年の時を経てテロ事件へ。かつて父を殺された刑事は、その混乱の中に犯人の顔を見つけるー。

朱戸アオさんの漫画『ダーウィンクラブ』1巻コミックス・レビュー。ややネタバレあり注意。

※このページにはプロモーションが含まれます。

『ダーウィンクラブ』1巻 主なあらすじ

ダーウィンクラブ(1) (モーニングコミックス)
  • 「『CEOと一般従業員の年収格差が千倍以上』の世界的企業100社は、3年以内にこの差を200倍未満にせよ!達成できない企業はこの世界から消滅することになる」
  • 赤いペンキによる落書きとともに、突如有名企業に対して行われた「犯行予告」。その首謀者と思しき男はひとりごちる。「進化の足りない獣は改良しなければ」
  • 時は遡って2011年。自転車屋を営む父と二人暮らしの少年・石井大良(たいら)は、謎の二人組に父を惨殺される。一度見た顔と名前は忘れない、という特技を持つ大良は、偶然犯人の顔と手首のタトゥーを目撃。それを心に刻む。
  • そして現在。フロリダと東京で行われている巨大企業・ワイルドスペース社のイベントで、同時にテロ事件が発生。成長し刑事となっていた大良は、テレビ中継でそこに父を殺した男がいることを発見。
  • 現場に急行した大良は、犠牲者の遺体を確認。そこに男はいなかったが、何人かの手首のいち部分が、不自然に切り取られていることに気づく。そしてそれは、フロリダの会場でも同じことが起きていた…。
  • その後、捜査班の末端に加えられた大良は、男がイベント会社に勤務していたことを突き止める。が、既に男は姿を消し、経歴も全て嘘だったことが判明。
  • しかし諦めずに地道な捜査を続ける大良。その折、またしても行われる落書きテロ、そして新たな殺人が…?

「格差社会」がテーマの本格サスペンス

医療系のサスペンス漫画中心に活躍されてきた、作者の朱戸アオさん。本作『ダーウィンクラブ』では、格差社会をテーマにした本格サスペンスに挑戦。

企業トップと末端従業員の経済格差、現実でも「それほど開くものなのか…?」と驚くことがあるが、本作の「犯人」はそんな社会の是正を目指しているよう。

独自の思想、そして数字が書き込まれた手首のタトゥーを持つ”彼ら”。「以前パタゴニアに行きましてね」「グアナコは見た?」を仲間同士での符牒として使う、インテリ系の思想集団と目されるが、その輪郭は1巻ではまだボンヤリ。

「顔と名前は忘れない」刑事

そんな彼らを追うのは、犯罪被害者でもある刑事・大良。

特別優秀な刑事、という訳では無いのだが、「一度見た顔と名前は忘れない」という特殊記憶を持つ男。飄々とした性格ながら、持ち前の能力と行動力を活かして突っ走る姿が面白い。

気になるのは「大良の父親が殺された理由」。一見普通の自転車屋だった彼が、後にテロ事件を起こす男とどのような関わりがあったのか?が目下の謎。

父の仇を取るために刑事となった彼。事件の切れ端をようやく掴み、捜査を続ける大良だが、その周辺にも怪しい影が…?『ダーウィンクラブ』2巻に続く!

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