『誰かがふと思った。生物(みんな)の未来を守らねば…』
人間の頭部に侵入・同化し、「人食い」となる寄生生物。その生物に右腕を侵食された高校生は、人間と寄生生物の狭間で何を見るのか?
岩明均さんの漫画『寄生獣』1巻コミックス・レビュー。ややネタバレあり注意。
『寄生獣』1巻 主なあらすじ
- ある夜、空から降ってきた、テニスボール大の謎の球体。その数不明ー。そこから出てきたヘビ状の生物は、耳から人間の内部に侵入し頭部と同化。人間の肉体を利用して生きる「寄生生物」となる。
- 同じ頃、高校生・泉新一もその生物に襲われるが、右手から侵入したそれを腕で食い止めることに成功。特に変化は見られず…と思ったが、翌日学校で右手の「不自然な動き」からトラブルが多発。
- 帰宅後、新一が右腕に包丁を向けると、右手の感覚が無くなり目・口が出現!「ざんねん…だ…おれ…みぎて…失敗…」と喋る「それ」は、新一の右手と同化した寄生生物だった!
- その後、知的好奇心旺盛で人間社会に適応した「右手」。新一はそれを「ミギー」と呼び共同生活を楽しむ。だがとある日、街中で「犬の頭部を奪った寄生生物」に遭遇!
- 犬を「共食い」するそれは、「人間の脳が残っている新一」を警戒、攻撃してくる。ミギーが自らを変形させ撃退、事なきを得たが、この件で新一は各地で起きている「ミンチ殺人」が、寄生生物の仕業によるものであることに気づく…。
- その「事実」を知りながらも、ただ日常を送るしかない新一。だがその生活が一変する出来事が。新しく高校に赴任してきた女性教師・田宮良子は、なんと寄生生物だった!高い知能を持ち人間社会に溶け込む彼女、その目的は…?
「寄生生物」その存在が意味するものは?
各種メディア化もされた岩明均さんの大出世作、『寄生獣』全10巻。
ジャンルとしては「ホラー」に属すると思うが、それにとどまらず「人間とは?」のようなスケールの大きい問いかけを読者に考えさせる、ドラマティックな作品。
もちろんホラーとしてショッキングな表現も多々あるが、それ以上に深みのあるストーリーが印象的な物語である。
その本作の最大の特徴である「寄生生物」。この設定がそれまでの漫画にない特異さで、非常に面白いもの。
- 人間の頭部を奪い、人間を捕食するが、首から下は人間のまま
- 高度な知能を持ち短期間で言語を習得。「人間として」生活を営む
- 自身を高速で変形・伸縮させ、刃物状となった先端で攻撃してくる
という生物。食物連鎖の頂点に立つ人間、それを食らう新生物でありながら、しかし消化器官などは人間のものを流用。そして人語を解しながらも人間を「エサ」と見なし、敵対関係となる。
そんな寄生生物は、果たして排除すべき人間の敵なのか?それとも人工に比して数パーセント以下の「野生のライオン」が徘徊している程度なのか?視点の違いで物語の見え方が変わるのが興味深い。
新一とミギーの「共生」
その「人間と寄生生物」の狭間に存在するのが、泉新一とその右腕を奪った寄生生物ミギー。
ミギーは寄生生物だが脳を奪えなかったため、「食欲」というものは無い。その行動原理は「自身の生存」のみ。
一見、新一とは良い関係を築いているように見えるが、しかし「生物としては全く別種」な存在。その意見が大きく割れることも。
その「二人」が共生をしていく様子に面白さ、翻って「人間とは…?」と考えさせっれていくのが、『寄生獣』ならではの深み。
そんな二人の前に表れたのは、寄生生物・田宮良子。彼女が特異なのは、「脳を奪う前の人間の地位を保ったまま生活を続けている」こと。しかも人間にものを教える「教師」!
身分を保ちたいために新一・ミギーとは事を荒立てたくない彼女。しかし別の寄生生物「A」を新一に引き合わせたことから、高校で事件が…?『寄生獣』2巻に続く!
コメント